突然ですが、ご自宅のカーテンレールや、壁にかかっている棚、子供のおもちゃなど、ネジやボルト、ワイヤーが使われているものって結構ありますよね。
今回は、そんな身近なモノやDIYの場面に隠された、ちょっと面白い物理やエンジニアリングのお話です。先日、我が家のウッドデッキにカーテンを取り付けようとした時の経験を例にご紹介します。
「ウッドデッキにカーテン?!」と意外に思われたかもしれませんが(笑)、実はその取り付け方法を考える中で、「なるほど、こんなところに中学校で習った物理が!」という発見がありました。
難しい計算は抜きにして、身近な道具や現象の裏にある「物理の知恵」を一緒に見ていきましょう!
我が家のウッドデッキにカーテンを!さて、どうやって?
我が家では、ウッドデッキにちょっとした目隠しを作りたくて、カーテンを取り付けることにしました。一般的なカーテンレールも考えたのですが、ウッドデッキの構造上、ワイヤーロープをピンと張ってそこにカーテンを吊るす方法が良さそうだと気づきました。まるで洗濯物干しみたいなイメージです。
この方法、インターネットで調べてみたら、同じように工夫されている方がたくさんいらっしゃって、とても参考になりました。(DIYって、他の人の知恵を借りられるのが面白いですよね!)
ワイヤーロープでカーテンを吊るすために、いくつかの道具が必要になります。
カーテンを吊るすのに使った道具たち
使うのは、こんな道具たちです。
- ワイヤーロープ: カーテンをかける本体のロープ。 (イメージ画像:普通のワイヤーロープ)
- 圧縮スリーブ: ワイヤーの端で輪っか(アイ)を作るための金具。ワイヤーを通してから専用工具で潰して固定します。 (イメージ画像:圧縮スリーブ)
- ワッシャー(座金): これが今回の主役の一つ! ネジやボルトと一緒によく使われる、あの平たいドーナツ状の金具です。 (イメージ画像:ワッシャー)
- ターンバックル: これも今回の主役! ワイヤーロープの間に挟んで、回すことでワイヤーを引っ張ることができる道具です。 (イメージ画像:ターンバックル)
これらの道具を使って、ウッドデッキの柱にワイヤーロープを固定し、ピンと張ってカーテンを取り付けます。
さて、これらの道具が「なぜ」必要なのか? ここに物理の知恵が隠されています。
道具に隠された、2つの物理の知恵
知恵その1:ロープを「ピンと張る」には力が必要!
カーテンを綺麗に吊るすには、ワイヤーロープがたるんでいてはいけません。ピンと張る必要がありますよね。
皆さんも経験的にご存知の通り、紐やロープをピンとさせたいときは、両側から「引っ張る」必要があります。この引っ張る力のことを「張力」と呼びます。
今回のワイヤーロープ設置では、この「張力」を調整するために「ターンバックル」を使います。ターンバックルを回してワイヤーロープを縮めると、ワイヤーには強い張力がかかり、たるみが少なくなります。
実は、このロープの「たるみ」と「張力」の間には、物理的にある関係があります。少し難しい数式で表すと、たるみ量 D は、張力 T、ロープの水平方向の長さ S、ロープにかかる重さ W を使って、おおよそ次のような関係になります。
$${D≒\frac{WS^2}{8T}}$$
(※これは近似式ですが、関係性を理解するには十分です)
この式をじっと見てみましょう。
- たるみ量 D は、張力 T が大きくなると小さくなっていますね。(T が分母にある)
- 逆に、ロープの重さ W や水平方向の長さ S が大きくなると、たるみ量 D は大きくなっています。(W や S2 が分子にある)
これは、皆さんが洗濯物干しなどで経験的に知っていることと同じではないでしょうか?
- 洗濯物をたくさん干してロープが重くなると(W が大きい)、たるみが増えますね。
- 物干し竿の間隔が広いほど(S が大きい)、たるみやすくなりますね。
- ロープを強く引っ張れば(T が大きい)、たるみは減りますね。
ターンバックルは、この張力 T を調整して、たるみ D を希望の量にするための道具なんです。身近な道具が、こんな物理の法則を実現するために使われているのは面白いですよね!

知恵その2:材料を「めり込み」から守る工夫!
さて、ワイヤーロープをピンと張ると、その張力はワイヤーを固定しているウッドデッキの柱(木材)にかかります。ワイヤーの端に作った輪っか(アイ)や、それを取り付ける金具は、木材に結構な力で押し付けられることになります。
もし、間に何も挟まずに金具を直接木材に強く押し付けると、金具の形に木材がへこんだり、割れてしまったりすることがあります。特に、金属のように硬いもので木材のような柔らかいものを押すと、力が加わった部分が「めり込んで」しまうんです。
ここで登場するのが「ワッシャー」です!
ワッシャーを間に挟むと、金具から木材にかかる力を、ワッシャーの「広い面積」で受けることができます。
これは、皆さんが立っている時に例えると分かりやすいかもしれません。
- 足の裏全体で床に立っているときと、
- つま先立ちをしているとき。
体重は同じですが、つま先立ちの方が足の裏(つま先)にかかる負担は大きいですよね? これは、体重という同じ力がかかる「面積」が、つま先立ちの方がずっと小さいからです。単位面積あたりにかかる力のことを「応力」と呼びますが、同じ力なら、面積が小さいほど応力は大きくなり、そこに負荷が集中します。
$${応力 σ=\frac{力}{面積}}$$
ワッシャーを使うということは、この「力を受ける面積」を大きくすることに他なりません。面積 S が大きくなれば、同じ力 W がかかっても、材料にかかる応力 σ を小さく抑えることができるんです。
今回のウッドデッキの例で言えば、ワイヤーの輪っかや金具が、細い線や点で木材に力を加える代わりに、ワッシャーという広い「面」で力を受けることで、木材への「めり込み」や損傷を防ぎ、しっかりと固定することができるわけです。
ミニ四駆やプラモデル、ニトリやIKEAの家具の組み立てなどでワッシャーを使った経験がある方もいると思いますが、「なんでこんな面倒なものがあるんだろう?」と思っていたその小さな金具に、こんな大切な役割があったんですね!
まとめ:日常の中にある「なぜ?」を、STEAMの発見に変えよう!
今回は、ウッドデッキのカーテン設置という身近なDIYを例に、
- ロープをピンと張るのに必要な「張力」と「たるみ」の関係
- ワッシャーが材料を守る「応力分散」の原理
という2つの物理やエンジニアリングの知恵を見てきました。
これらの知識は、もちろん本格的な建築や機械設計といったエンジニアリングの世界で基礎となりますが、それだけでなく、私たちが日々使う様々な製品や、身の回りのできごとを「なぜ?」という視点で捉え、その仕組みを理解するためのヒントでもあります。
お子さんと一緒に何かを作る時や、身の回りの道具を使う時に、「これ、なんでこんな形なんだろう?」「どうしてこうなっているんだろう?」と、ぜひ「なぜ?」と問いかけてみてください。
その「なぜ?」の先に、今回ご紹介したような物理や数学、技術といったSTEAMの面白い世界が広がっています。DIYや簡単なものづくりは、まさに生きるSTEAM教育の場。道具の使い方だけでなく、その道具に隠された知恵にも目を向けることで、お子さんの知的好奇心と論理的な思考力を同時に育むことができるはずです。
ぜひ、日常の中にある小さな「発見」を楽しんでみてください!

