最近の生成AIの進化、本当にすごいですよね! チャットAIがスラスラと自然な文章を作ったり、あっという間に素敵な絵を描いてくれたり。まるで魔法みたい…!
でも、この驚きの技術、その裏側には実は「数学」が隠されています。特に、高校で習う「行列」というものが、とても大切な役割を果たしているんです。
前回の記事で、生成AIが情報の「どこに注目すべきか」を判断する「アテンション機構」という仕組みに、「行列」が関わっていることに少し触れました。今回は、もう少し具体的に、「行列」がアテンション機構の中で、どんな「仕事」をしているのか、その雰囲気を覗いてみることにしましょう。
「行列なんて、数学で習ったけど難しそう…」と感じる方もいるかもしれませんが、大丈夫です! 難しい計算は抜きにして、「なるほど、行列ってこんなことに使うのか!」という発見をお届けできれば嬉しいです。
驚きの生成AI、その賢さのヒミツはどこに?(おさらい)
生成AIがなぜあんなに人間のように自然な文章を書いたりできるのか。その賢さの秘密の一つが、前回お話した「アテンション機構」です。
アテンション機構は、AIが文章を読むときに、全ての単語を同じように扱うのではなく、「この単語とあの単語は関係が深いな」「この情報は特に重要だな」というように、注目すべきポイントを判断する仕組みでしたね。人間が文章を読むときに、大事なところに注目して理解を深めるのと似ています。
生成AIを動かす「行列」って、一体ナニ者?
さて、今回の主役「行列」です。数学で、数や文字を四角く並べたものとして習いましたよね。
AIの世界では、この「行列」がとても便利な「道具」として使われています。例えるなら、情報の「形を変える魔法の箱」のようなイメージでしょうか。ある情報(数値のまとまり)を行列という「箱」に通すと、ルールに従って計算されて、別の新しい情報(新しい数値のまとまり)が出てくる、という感じです。
生成AIの「アテンション機構」では、この「行列」という魔法の箱が、情報を処理する様々な段階で、重要な「仕事」をしています。
行列がAIの中で働くステップを見てみよう!
アテンション機構が「どこに注目するか」を決めるために、AIはいくつかのステップで情報を処理します。その中で、行列がどんな仕事をしているか見てみましょう。
ステップ1:言葉を「数値のまとまり」に変える
AIは、私たちが使う言葉(単語)をそのまま理解することはできません。まず、単語一つ一つを「数値のまとまり」(これを「ベクトル」と呼びます)に変換します。
例えば、「猫」という単語が、[0.2,0.5,0.1] のような3つの数字の並びで表される、といったイメージです。「ベクトルなんて将来どこで使うの?」と思っていた高校生の頃の自分に、「ほら!猫も魚も、ベクトルになるんだよ!」と教えてあげたくなります(笑)。
この「単語を数値に変える」プロセス自体も、AIがたくさんの文章を「勉強」することで実現されています。AIは大量の文章を読む中で、「『猫』という単語は『魚』や『食べる』という単語と一緒に出てくることが多いな」「『走る』という単語は『速い』とか『遅い』という単語と関係が深いな」といった関連性を学び、それぞれの単語の意味や特徴を反映した数値のまとまり(ベクトル)を作り出しているんです。
ステップ2:「行列」で情報の形を変える!
次に、AIはアテンション計算に必要な「クエリ(Query)」「キー(Key)」「バリュー(Value)」という3種類の情報を作り出します。これは、先ほど作った単語の「数値のまとまり」(ベクトル)に、「行列」という魔法の箱を掛けることで行われます。
例えるなら、元の「数値のまとまり」が材料だとすると、それぞれの目的に合った「クエリ用」「キー用」「バリュー用」という3つの「行列の箱」を通すことで、情報がそれぞれの目的に合った形に「加工」されるイメージです。
この「クエリ用行列」「キー用行列」「バリュー用行列」自体も、生成AIが「勉強」する中で、AIが「どういう情報の形が必要か」を学んだ結果として、賢さが詰まった箱のように変化していきます。
ステップ3:情報同士の「関連度」を計算!
アテンション機構は、「注目したい情報」(クエリ)と「比較したい情報」(キー)がどれくらい似ているか、関連があるかを計算します。これは、数学でいう「内積」という計算を使って行われます。
「クエリ」という数値のまとまりと、「キー」という数値のまとまりを、内積というルールで計算すると、一つの数値が出てきます。この数値が大きいほど、二つの情報(単語)は「関連が深い」「似ている」と判断できるんです。
ステップ4:「注目度」という割合に変換!
たくさんの情報の中から、どれにどれくらい注目すべきか? その「注目度」を、AIは「確率」のような割合で考えます。
ステップ3で計算した「関連度」の数値たちを、「ソフトマックス関数」という特別な関数に通します。ソフトマックス関数は、出てきた数値を全て足すと1(または100%)になるような「割合」に変換してくれる魔法のような働きをします。
例えば、関連度が [5, 2, 1] と計算された場合、ソフトマックス関数を通すと [0.7, 0.2, 0.1] のように、合計が1になる「注目度」の割合に変換されるイメージです。この割合が大きい情報ほど、AIは強く「注目」することになります。
ステップ5:注目度に合わせて情報を「混ぜ合わせる」!
最後に、AIはステップ2で作った「バリュー」という情報たちを、ステップ4で計算した「注目度」の割合を使って「混ぜ合わせ」ます。
例えるなら、注目度が高かった情報の「バリュー」ほど、結果に強く影響するように「重みをつけて」混ぜ合わせる、ということです。こうして出来上がった「混ぜ合わせた情報」が、アテンション機構が「ここに注目した結果、こういう情報が得られました」という、文脈を考慮した新しい情報になります。
このステップでも、情報を「重みをつけて足し合わせる」という計算の中に、行列やベクトル演算が使われています。
結局、「行列」はAIのどこで、どんな仕事をしているの?
アテンション機構が「どこに注目すべきか」を判断する一連のステップの中で、行列は主に以下の2つの大切な「仕事」をしていると言えます。
- 情報の「形を変える」「加工する」道具: 単語ベクトルからクエリ、キー、バリューを作る際に、「行列を掛ける」ことで情報をそれぞれの目的に合った形に変換しています。
- 「関連度」の計算を助ける道具: 情報同士の関連度を計算する「内積」といった操作の中に、ベクトルの演算として関わっています。
このように、行列はアテンション機構の中で、情報を効率的に処理し、それぞれのステップで必要な形に変えたり、関係性を計算したりするための、なくてはならない「基盤」となっているのです。
まとめ:数学はAI理解の「鍵」になる!子供と一緒に未来を探求しよう
生成AIの驚くべき能力は、今回覗いてみた「アテンション機構」のような仕組みと、それを支える「行列」をはじめとする数学の上に成り立っています。
高校で学ぶ数学は、単に問題を解くためだけでなく、AIのような最新のテクノロジーが「どうやって動いているのか」を理解するための強力な「鍵」となります。数学を学ぶことは、将来お子さんたちが向き合うであろう、まだ見ぬ技術の扉を開く力になるのです。
もし、お子さんが「数学って、将来何の役に立つの?」と尋ねたら、「実はあのすごいAIも、高校で習う数学で動いているんだよ! 行列っていうのが、AIが言葉を理解して、文章を作るのを手伝っているんだ。」と教えてあげられるかもしれません。
今回の記事では、行列がアテンション機構にどう関わっているかの「雰囲気」を掴んでいただけたら嬉しいです。具体的な数学単元とアテンション機構のより詳しい関係については、また別の機会に掘り下げていきたいと思います。
ぜひ、親御さん自身も数学への興味を再発見したり、お子さんと一緒にAIと数学の繋がりを探求したりして、未来への学びを楽しんでみてください!

