「伸び縮み」する腕を再現できるかもしれない技術8選

Make(つくる)

はじめに

以前こちらの記事で、「ポピープレイタイム」という子供向けホラーゲームに登場するGrab Pack(伸び縮みする手)を再現したいなぁ、ということで、なんちゃってスライダークランクの即席プロトタイプを紹介しました。

要は、「回転運動を直線の前後運動に変えられる」ということで、モーターを使えば、前後運動を自在に操れるかもしれない・・・ということで紹介したものでした。

ただ、せっかくなので、伸び縮み機構の再現に使えそうな技をこの際、網羅的に押さえておきたいと思い、可能性のあるものを8選と題してここにご紹介します。

腕の伸び縮みに使えるかも!?な「伸縮機構」8選

1. ばね

「伸び縮み」と言えば、まず真っ先に思いつくもののひとつが「ばね」でしょう。おもちゃや小さい装置に組み込まれている直径数mm程度の小さなばねもあれば、ホームセンターなどにいくと、直径10cmもあるような太く大きいばねまでサイズはさまざまです。最近はガラス張りのエレベーターもよく見かけるようになったので、エレベーターの地上階床には太くて大きなばねが取り付けられているのを目にしたことのある人も多いはずです。

ばねをGrab Packに適用することを想像してみると、次のような課題が考えられます。

  • 伸ばすためには縮めておく必要があるが、ばねは自分では縮まないので何かしら縮ませるための機構が必要
  • 縮ませた以上にばねは伸びてくれないので、数十センチオーダーで腕を伸び縮みさせようと思ったら、ばね自身にもその程度のオーダーの長さが必要(あまり現実的じゃない)

2. 輪ゴム

「伸び縮み」といえば、ばね以上に身近な存在です。伸び縮みの性質からみたとき、ばねとの最大の違いは、「縮ませても元に戻ろうとはしない」ことです。伸ばした輪ゴムは元に戻ろうとしますが、その逆はないですよね。

ということは、Grab Packに適用しようと考えると・・・

  • 伸ばすことができない

という致命的な欠点があることになります。ただ、以下のような感じに、たとえば2つの筒を輪ゴムでつないだものを、エイッと振り下ろしたときの遠心力を使って無理やり伸ばすという手はありますね。

3. ジャッキ式機構

車用のジャッキも、伸び縮み機能を持っていますね。実物に触れたことはなくとも、下の写真を見れば、なんとなく伸び縮みの機構はイメージできると思います。これを小型版にすれば、もしかするとGrab Packに応用できるかもしれません。

横長の菱形が縦長に変形することで伸びるわけですが、この機構の素晴らしい点は以下の図に集約されると思います。

この機構は「パンタグラフ(菱形リンク)」とも呼ばれ、菱形を横から押し縮めると、縦に伸びていくのが特徴です。菱形をいくつもつなげれば、少ない横幅のスペースで、一気に長く伸ばすことができます。

たとえば、菱形1つで伸びる分を1とすると、それが4つ組み合わせれば4伸びます。そして、その時に菱形が占拠する横幅は、菱形が1つのときも4つのときも変わらないということなのです。たとえばこの機構を何か筒状のものの内部に収めておけば、びよーん、と伸びそうなものが作れそうな予感がしてきませんか?

4. ヨーヨー式機構

ヨーヨーもまた、伸び縮みする、比較的身近なモノのひとつかもしれません。

ヨーヨーの伸縮原理は言わずもがな、軸の周りに巻き巻きされた糸の引き出しと収納、です。

通常の使い方だと、重力を使って鉛直下方向に引き出し、また鉛直上方向に戻ってきます。ただ、もしハイパーヨーヨーに触れたことのある人であれば、前や上方にヨーヨーを放り出すパターンも知っていることと思います。その場合には重力ではなく、腕の放り出す力や遠心力を利用します。

いずれにせよ、引き出すためには力を必要とします。

これをGrab Packに応用することをちょっと想像しただけでも、あまり筋が良くなさそうな匂いがプンプンです。腕を前後に伸縮させる必要があるので、重力が使えません。ということは、輪ゴムのケースと同じように、腕の振り下ろし、遠心力で糸を引き出してくるしかありません。しかし、糸の引き出しと収納の安定的な制御が非常に難しく、また下図のようにヨーヨーを取り囲むケースとの間に摩擦が働きやすいため、伸縮がうまく機能しなさそうです。

5. ストロー

子ども用の紙パックジュースなどによくついているストローは、透明な袋から取り出した後、伸ばして固定して、パックに差し込む式になっています。あのストローも、伸びると言えば伸びるストローですね。ただ、伸びたら伸びっぱなし。縮む構造にはなっていません。

ということで、径の微妙に違う2つの筒を組み合わせてスライドさせる構造の参考、程度にとどまりそうです。

6. 巻き尺機構

伸縮の幾何学的な形態は、ヨーヨーに近しいものがあります。巻き尺の場合はヨーヨーと違い、まず引き出しのために”しっかりとした”外力が必要になります。ヨーヨーのように、振り下ろした際の遠心力で、という風にはいきません。実際に使用する場合も、手で引っ張り出して使いますよね。逆に巻き戻すときは、ボタン一つでシュッと戻ります。これは、内部に仕掛けられたゼンマイのなせる業です。

というわけで、もしGrab Packに応用するのであれば、引き出すための外力機構を考えなければいけません。あまり、筋がよさそうな感じではありません、、、

7. スライダークランク機構

そして以前の記事で紹介した、スライダークランク機構もあります。これは平たく言うと、「回転運動を直線運動に変える機構」です。回転運動といえば、手近に手に入る部品として「モーター」があります。つまり、モーターがあれば、その回転を直線運動に変えることができます。

この機構の最大の制約は、「直線に動ける距離(ストローク)が、回転円(クランクの回転半径×2)の大きさに依存する」ということです。平たく言うと、「直線上に長ーく動かしたくば、回転円を大きく取る」必要があるということです。ですが、今回Grab Packは腕に取り付けたり手で持ったりして使うことを考えると、あまり大型化はできませんね。というわけで残念ながらこちらも、あまり筋のよさそうな感じはしません。

8.ラック&ピニオン機構

最後に紹介するのは、ラック&ピニオン機構です。下図のギアがピニオン、直線に溝が彫られている方がラックです。ギアが回転することによって、ラックが直線方向に押し出される仕組みです。

(出典:Wikipedia)

身近なところだと、自動車で「ハンドルを回したときにホイールが向きを変える仕組み」に応用されているようです。ハンドル中心に取り付けられた軸の先端にピニオンがついていて、そこに取り付けられているラックが車の幅方向に左右移動することによって、ホイールの向きを変えているようです。

「・・・ラックってそんな簡単に手に入るものなのか?」という疑問はありつつ、この機構を初めてみたとき、ピンときました。Grab Packをつくるのに一番適してそうなのはこやつである、と。

ギアが小さいのにあまりにラックが長いと、モーターの負担が大きすぎてあまり上手く動作しないかもという不安はありつつ、直線運動を生み出すのに一番素直なアイデアで、一番コンパクト化できそうな雰囲気です。

まとめ:Grab Packに向いてそうな伸縮機構

というわけで、Grab Packに向いていそうかいなさそうかの観点だけで整理した結果は、以下のとおりです。ラック&ピニオン機構が一番有望そうなので、次のプロトタイピングのネタにしたいと思います。

機構伸び縮み総評
1.ばね縮み切らない
2.輪ゴム×伸ばす方が大変
3.ジャッキ式機構やろうと思えば長く伸ばせるが外力が必要
4.ヨーヨー式機構伸縮ともに面倒
5.ストロー×伸びたが最後縮まない
6.巻き尺機構伸ばすのに外力要る
7.スライダークランク機構伸縮できるがスケールが小さい
8.ラック&ピニオン機構長いラックさえ手に入れば伸縮のコントロールは一番楽そう