1ミリも詳しくないトイレットペーパーのデザインを、手持ちの知識だけで妄想してみた①形態とサイズについて

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日常生活で毎日使うトイレットペーパー。あまりにも身近すぎて、そのデザインについて深く考えることはほとんどありません。

しかし、「自分でトイレットペーパーをデザインしてみよう」とちょっと思考を遊ばせてみると、実に色々な発見がありそうです。

生成AIでたいていの答えはすぐに手に入ってしまう時代だからこそ、手元にある道具で最大限思考することが、ますます重要さを増してきています。

知識の価値は、「どれだけ知っているか」から「知識をどう使うか」へとシフトしています。

本記事ではあえて、「トイレットペーパー」という日用品をケーススタディにしますが、目的は、トイレットペーパーに詳しくなることではありません。

  • 手持ちの常識と、学校で学んだ基礎知識(数学、物理、化学)だけで、どこまで「最適解」に近い設計論理を導き出せるか?
  • 「使いやすさ」「コスト」「安全性」「環境配慮」という多面的な制約の中で、設計者が何をどう判断しているのか?

この思考実験を通じて、「技術や経済、環境など多面的に物事を見ることによる知的興奮」を体感し、「学校で学んだ知識が日用品を支える普遍的な論理である」という実感を得てみましょう。

トイレットペーパーって何するもの?

トイレットペーパーの目的は明快、「汚れを拭き取る」こと。そして「トイレに流せる」というのも付け加えておく必要がある。この2つの要件、実は矛盾をはらんでいる。拭き取るには「破れにくさ」が必要だが、流すには「水で簡単にほどける」ことが求められる。この二律背反をどう解決するか、が鍵になりそうだ。

形態はどうあるべきか

ロール状である理由

まず、なぜロール状なのか?平たく折りたたんで箱に入れる方式(ティッシュペーパー形式)じゃダメなのか?

使い勝手の観点

それを考えるために、仮に個室内にティッシュペーパーのボックスしか置いていなかった場合に、どんな感じの拭きっぷりになるかをイメージしてみたい。

まず、箱をどこに置くか。床?いや、それは汚い。置台?あればいいね。でも、あるとは限らない。左手にボックスを持って、右手でティッシュ?左利きならその逆か?いずれにせよ、片手にボックスを持った状態では多分、拭いている最中にバランスを崩し目も当てられない惨事が訪れそうだ。

ということで、手放しでティッシュペーパーのボックスだけがあっても、地味に困りそうだ。

ではもし、通常のトイレットペーパーロールと同じように、ティッシュペーパーのボックスがちゃんと壁に固定されていたとしたら?必要な枚数だけ適宜引っ張り出して、拭く。特に動線上問題になることはなさそうだ。

おそらく、箱に入れる方式でも、ダメということはないだろう。トイレットペーパーのロールを取り付けるホルダーを設置するスペースがあるのだから、その代わりに箱を取り付けるようなホルダーが壁に常設されていればよいだけだ。

というわけで

  • 壁にボックスホルダーさえ常設されていれば、ティッシュペーパーボックス形式でも成り立ちそう

製造の観点

作り手の立場ではどうだろうか。なんとなくだが、ロール状の方が、大量生産には向いてそうだ。薄く、平たく、長く送り出したトイレットペーパーを、最後ロールに巻き取っていくだけのはず。

その点、ティッシュペーパーはどうか?ティッシュペーパーは現にボックス売りで販売されているわけだから、製造上難があるということはないはずだ。人々のトイレニーズに見合うだけのぺーパーを、ティッシュボックス形式では供給しきれないとか、あるんだろうか。ここは、わからない。でも、多分それはないだろうと思われる。

  • 製造の観点からは、ロール形式でもボックス形式でも、大差ないだろうと思われる

サイズはどうすべきか

以下、ロールの場合に限定して話を進める。

ロールのサイズはどうすべきだろうか。ロールのサイズで決める必要があるのは「ロール内径」「ロール外径」「ロール幅」「紙厚」この4つだろうと思われる。

ロール内外径を決める上で考えるべきこと

当然のことながら、ロールはトイレに収まらなければいけない。収まればいいというものでもないが、収まらないと話にならない。

内径が極端に大きかったら?

まずは極端に内径が大きいケースを考えてみる。内径1mのロールは許されるか?我々の普段使う向きでロールを設置することを考えるなら、内径1mのロールは論外だ。しかし、ロールの設置向きを下図のように変えてみれば、不可能というわけではないかもしれない。

・・・ん?というか、この形式、デパートやサービスエリアで見たことあるな。これか。

(出典:ジャンボロール問屋HP

写真のものはロール内径は1mもないものだが、ではスペースが許せば、内径をどこまでも大きくしてもいいのだろうか。

いい悪いはさておき、内径を大きくしても、何のメリットもなさそうだ。「ロール」というくらいで、回転させながら紙を引っ張り出すわけだから、内径というのはほぼそのまま、回転軸の直径ということにもなる。いわゆるロールホルダーの軸径が1mになるということだ。ただただ、無意味である。

内径が極端に小さかったら?

今度は逆に、極端に内径が小さい場合を考えてみる。たとえば、1cmとか、1mmとか。

これはロール外径と併せて考えていかないといけない点だが、パッと2つの問題が考えられる。

1つは、ロールホルダーの軸が相当強固な材料である必要が出てくるということ。トイレットペーパーは基本、元々木から出来ている。薄いからといって侮ってはいけない。密になるとそれなりの重さになる。重いものを、細い軸で支えないといけないのだから、その軸は相当強いものじゃないといけないということだ。そんなとこでわざわざ冒険に出る必要があるだろうか。

もう1つは、紙を引っ張り出しにくくなる、つまり、ロールが回転しづらくなるのではないかということだ。これは、車のハンドルのように円の内部に穴のある円を回す場合と、コーヒーカップのハンドルのように中身が密の円を回す場合の回しやすさの違いをイメージすればわかる。明らかに前者の方が回しやすいはずだ。つまり、トイレットペーパーのロール内径をあまりに小さくしすぎると、このコーヒーカップのハンドルのような事態に陥ってしまう。

外径が極端に大きかったら?

ロール外径が大きくなることは、トイレットペーパーの分量が増えることを意味する。だから、ロール内径と違って、大きくても無意味、ということにはならない。外径が大きくてトイレットペーパーの分量が増えればその分、ロールの取り替え頻度が減り、メンテ担当の人はちょっとだけ楽をできるかもしれない。

ただし先ほども書いたとおり、トイレットペーパーの重量を侮ってはいけない。外径を大きくしすぎると、取り替えに煩わしさと危険を孕むことになりそうだ。実にばかばかしい。

試しに、ロール内径5cm、ロール外径100cm、ロール幅10cmと設定した場合のトイレットペーパー全体の重量を計算してみる。比重が必要だ。トイレットペーパーの比重・・・木の比重・・・わからん。が、水に沈むイメージはないので、1よりは小さいか?その辺の汎用プラスチックと同じくらいの比重な気がするから、仮に0.95としておく。すると

$${0.95 \times (5\pi+100\pi) \times (100-5) \times \frac{1}{2} \times 10 \sim 150 \text{[kg]}}$$

150kgですって。ばかですね。

外径が極端に小さかったら?

こんなケース、考える価値もないですね。外径が極端に小さいということは、それに伴って内径も小さくする必要があり、全体的にメチャクチャ小さいトイレットペーパーロールがあったらどうかという話です。無意味ですね。すぐに紙がなくなってしまう。

まとめると
  • ロール内径が小さすぎると紙を引っ張り出しづらくなりそうなので、「適度に」内径はあった方がいい。ただし、ロール内径が大きすぎると回転軸もそれに連れて無駄に大きくする必要があるので、あくまで「適度に」。
  • ロール外径が大きすぎると、トイレットペーパーが重くなりすぎる。取り替えに不便すぎるし、ホルダーで支えるのも大変。「適度に」小さくする必要がある。当然、小さすぎは無意味。

ロール幅を決める上で考えるべきこと

ロール幅が極端に小さいケースは考えないことにしよう。たとえば1cmとか1mmとかいうことになるが、それはもはや「ペーパー」の範疇に入るのか怪しくなってくるし、あえてトイレットペーパーのロール幅をメチャクチャ狭くすることに何ら意味はなさそうだ。

極端に幅広の場合だけ考えてみよう。たとえば、幅1mだ。すると、こんなイメージになるんじゃなかろうか。

通常のトイレットペーパーは、長く引き出してからコンパクトにまとめるわけだが、幅広のロールの場合は、引き出すのは少しだけでよい。アルミホイルやサランラップを引き出すイメージに近いかもしれない。

しかし、この幅広ロールも、直感的に問題だ。どう考えても「引き出しづらい」。1mの幅を、どうやって均等に引っ張り出すのか。片側だけ引っ張れば、その部分だけちぎれてしまう。その問題を素材面で解決しようとすると、強度のある紙を使用することになるが、おケツへの当たりがキツくなってしまう。よって

  • ロール幅は、片手で引っ張ったときに、トイレットペーパーが破れない程度に留めておくべきだろう。10cmくらいか?15cmでも、直感的には怪しそうな感じがある。

紙厚を決める上で考えるべきこと

最後に紙厚について考えてみる。

紙厚を決める観点は「巻けるか」「引き出せるか」「拭けるか」の3つであると予想する。

その厚さで、巻けるか?

いま、ロールを前提に考えているので、巻けなければ話にならない。真面目に検討するまでもなく、分厚すぎる紙は、ロールにならない。たとえば、1mm厚なんていうのはお話にならない。

では、100μmなのか、10μmなのか、はたまた1μmなのか。それが問題だ。

トイレットペーパーは基本、パルプでできているはず。その辺の紙と大差ない。

その辺の紙は筒状に丸めようとすると、反発してくる。それなりに紙厚があるからだ。それはどれくらいだろう。300ページ、つまり150枚くらいある文庫本の厚さが2cmくらいだった気がするので、文庫本の紙相当の厚さはだいたい${\frac{20}{150}=0.133\text{[mm]}\sim130\text{[μm]}}$程度と予想する。

それだとおケツへの当たりがまだ強そうなので、それより薄いはずだ。つまり、おそらく100μmオーダーの線はないだろう。10μm、もしくは1μmオーダーだ。

巻けるか巻けないかで言えば、10μmも1μmも巻けるのではないだろうか。しかし、1μmは1mmの1000分の1。さすがにやりすぎ感がある。

その厚さで、引き出せるか?

もし1μmのように極薄の場合、引っ張り出そうとするとあっさりとちぎれてしまって話にならないのではないか。つまり、引き出せるか、引き出せないか、の観点だけで言えば、「ある程度の厚み」が求められるのではないだろうか。

これは真面目に計算しないと何とも言えないが、ロールを引っ張り出すときの力でトイレットペーパーに働く応力で、トイレットペーパーが破れない程度には厚くしておく必要がある。

トイレットペーパーの許容応力を${\sigma_c\text{[MPa]}}$、ロールを引っ張り出すときの力を${F\text{[N]}}$、ロール幅を${W\text{[mm]}}$、トイレットペーパー厚を${t\text{[mm]}}$とすると

$${\frac{F}{Wt} \leq \sigma_c}$$

${\sigma_c\text{[MPa]}}$はトイレットペーパーの素材で決まる値で、${F\text{[N]}}$もおそらく、ロール全体の寸法と質量で決まってくるのではないか。そして、${W\text{[mm]}}$も決めた値なので、上の不等式を満足させるには、${t\text{[mm]}}$が一定以上大きくないといけないだろう。

その厚さで、拭けるか?

最後に一番肝心の問題ーー「拭けるか?」である。

再生紙で作られたちょっと硬めのトイレットペーパーでゴシゴシ拭くと、おケツのヒリヒリ感に悩まされる。そもそもなぜ硬いかというと、「厚い」からだ。そして、硬いと紙にシワが入りづらく、肝心の「拭き取り力」という点でも難がありそうだ。つまりそれらの観点からは、一定「薄い」必要がある。

一方で、薄すぎるのも考えものだ。薄すぎると、拭き拭きしている内に紙が破れてしまい、最悪のシナリオも想定し得る。

華麗に拭き取るためのしなやかさを保つには「薄く」、打たれ強さを保つには「厚く」する必要があり、ちょうどいいバランスが存在しそうだ。

まとめると

  • 巻けるか?の観点ではおそらく10μmオーダーが妥当。
  • 引き出せるか?の観点では、ある程度厚くする必要がある。が、ロールを引き出す力を推定しないと具体的には何とも言えない。
  • 拭けるか?の観点では、薄すぎても厚すぎてもダメ。ちょうどいいバランスがあるはず。
  • まとめると、10μmオーダーのどこかに、全てをいい感じに満足するバランス点があるはず。

今回の思考実験でたどり着いた仮説

こうして考えてみると、トイレットペーパーという普段意識しない日用品一つを取っても、「使い勝手」や「安全性」といった多面的な制約(デザインのジレンマ)が複雑に絡み合っているであろうということが見えてきました。

特に「紙厚」の決定には、「巻けるか(素材の柔軟性)」「引き出せるか(破断応力)」「拭けるか(肌触りと水溶性)」という、物理、化学、人間工学が交差する最適解が存在しそうです。

今回の思考実験でたどり着いた仮説をまとめます。

  • ロール内径は、小さすぎると回りにくく、大きすぎると無意味なので、どこかに「適度な値」があるはずだ。
  • ロール外径は、大きすぎると重くて扱いづらく、小さすぎるとすぐ無くなるので、やはり「ほどほど」に落ち着くはずだ。
  • ロール幅は、片手で引っ張ったときに破れない程度が、事実上の上限になりそうだ。
  • 紙厚は、「巻ける」「引き出せる」「拭ける」の全部を同時に満たす、どこかの厚みに落ち着くはずだ。

これらについて、実際のところどうなのか、調査結果を近日Noteで紹介しますので、お楽しみに!