電車のパンタグラフにみるSTEAM

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先日、小学1年生の息子と電車で出かけたときのこと。改札でPASMOをピッとかざした息子が、カードのイラストを指差して、僕に質問してきました。

こっちが電車?

PASMOのイラストには、電車とバスがかなりシンプルに描かれています。息子は、その2つの乗り物のうち、どちらが電車なのかを確認したかったようです。私はイラストをじっと見て、「うん、こっちが電車だよ」と答えました。

すると息子は、電車のイラストの上にチョンと描かれたパーツを指差し、

「これ、なあに?」

と畳みかけてきました。

(・・・息子よ、よくぞそこに気が付いた・・・!!)

これこそが、電車の「電」車たるゆえんを示す、とても大切な部分 ーーー「パンタグラフ」。

というわけで今回は、身近過ぎてあまり気にも留めていないかもしれないこの「パンタグラフ」がどんなものなのかを確認した上で、そこから学び取れるSTEAMの要素に触れたいと思います。

パンタグラフって、どんな形?

まず、パンタグラフってどんな形をしているか、皆さんはご存知でしょうか?

電車の屋根の上についている、ひし形やシングルアーム(一本腕)のような形をした、あの部分です。電車が駅に停まっているときなどに、じっくり観察してみると、その独特の形に気づくはずです。

名前の「パンタグラフ」というのは、もともと製図で図形を拡大・縮小するときに使う文房具の名前が由来だと言われています。もちろん、電車のパンタグラフは、製図用具とは全く異なる、非常に重要な役割を担っています。

パンタグラフの超重要ミッション!それは「電気を受け取ること」

ずばり、パンタグラフの最も重要な役割は、「電車が走るための電気を受け取ること」です。

私たちは普段、家で家電を使うときにコンセントにプラグを差し込んで電気をもらいますよね。電車も同じで、走るためには電気が不可欠です。しかし、電車は線路の上を移動するので、コンセントに差しっぱなしにはできません。そこで登場するのが、パンタグラフ。

電車が電気を受け取るための方法はいくつかありますが、日本で最も一般的なのは、線路の上にある「架線(かせん)」と呼ばれる電線から電気を受け取る方法です。

パンタグラフは、常にこの架線に触れ、電気を電車本体に流し込む役割を果たしています。まるで、動くコンセントのようなものですね。

(出典:パワーアカデミー

電気に馴染のある人であれば違和感ないかもしれませんが、そうじゃないと「え、そうなの???」となるかもしれませんね。パンタグラフと架線の接触が心もとなさ過ぎて、そんなんで電気流れるの??という印象を持たれるかもしれません。でも、そこは流れるんです。

どうやって電気を受け取っているの?

パンタグラフの仕組みは、一見シンプルに見えて、実はすごく精密にできています。

  1. 架線との接触: パンタグラフの先端には、「すり板」と呼ばれる部品がついています。これが架線に常に接触し、電気を受け取ります。すり板は、電車が高速で走っても架線から離れないよう、常に一定の力で架線に押し付けられています。
  2. 電流の取り込み: 架線から受け取った電気(電流)は、パンタグラフを通じて電車のモーターへと送られます。この電気がモーターを回し、電車を動かす力になるわけです。
  3. しなやかな動き: パンタグラフは、電車の揺れや、架線の高さのわずかな変化にも対応できるよう、バネや関節のような構造でしなやかに動きます。これにより、高速走行中でも安定して電気を受け取り続けることができるのです。

まさに、電車の屋根の上で、見えない電気と電車を繋ぐ、縁の下の力持ちのような存在ですね。

なぜパンタグラフが必要なの?電車の種類と電気の秘密

電車が電気で走っていることは知っていても、なぜ「パンタグラフ」という独特な方法で電気を受け取る必要があるのか、疑問に思うかもしれません。

実は、電車が電気で走る方法には、パンタグラフ方式以外に「第三軌条方式」というものもあります。それぞれ、以下のような方式です。

  • 架線集電方式(パンタグラフ方式):多くの電車や新幹線で採用されている方法です。架線からパンタグラフで電気を受け取ります。電圧が高いため、高速で多くの車両を動かすのに適しています。
  • 第三軌条(だいさんきじょう)方式:一部の地下鉄やJRの特定の路線で見られる方法です。線路の横にもう一本、電気を通すためのレール(第三軌条)が敷かれていて、電車の下部にある集電装置(コレクターシューなど)がこれに接触して電気を受け取ります。パンタグラフがないので、トンネルの高さを低くできるメリットがあります。

PASMOのイラストの電車にパンタグラフが描かれていたのは、日本で最も一般的な架線集電方式の電車を表しているから、というわけです。

パンタグラフ界隈に潜むSTEAMの要素

普段プラットフォームでぼーっと眺めているはずのパンタグラフ。ここにも、STEAMの要素がいろいろ散りばめられています。

Science(科学)

  • 電気の基礎: 電車が動くためのエネルギー源としての「電気」の存在と役割。
  • 電流の原理: 架線からパンタグラフを通じて電車本体に電気が流れる(集電)仕組み。
  • 電磁力: 最終的に電車が走るのは、電気によってモーターが回り、車輪が回るためです。モーターが電気で回る背景には、電磁力があります。

Technology(技術)

  • 集電技術(パンタグラフ): 高速走行する乗り物に、外部から継続的かつ安定的に電気を供給するための装置(パンタグラフ)の設計と仕組みそのもの。
  • システム比較: パンタグラフ方式(架線集電方式)と第三軌条方式の、それぞれの技術的な特徴(電圧、速度への適性、トンネルの高さなど)と応用分野の比較。
  • 構成部品: 架線に接触する「すり板」など、特定の役割を持つ部品の材質や構造。ひとつひとつの部品の形状や素材、色、寸法がどうなっているのかを気にしてみると、新しい疑問や発見と出会えるかもしれません。

Engineering(工学)

  • 機械設計: パンタグラフの「ひし形やシングルアーム」の独特な形状。これは、電車の揺れや架線の変化に対応し、常に一定の力で接触を保つためのバネや関節を用いたしなやかな構造設計。
  • 移動体への電力供給: 「移動する物体にどうやってエネルギーを継続的に供給するか」という工学的課題を、架線とパンタグラフの組み合わせで解決している。

Art(アート/リベラルアーツ)

  • 「電車」の普及:そもそもなぜ電車が普及することになったのか。蒸気機関車との差異を調べたり考えたりすることで、世の中が何を求めているのか、どこに進んでいくのかについて示唆が得られるかも。

Mathematics(数学)

  • Σに微積分、オイラーの公式…:こちらは慶応義塾大学の博士論文ですが、式(3.1)~(3.5)を眺めるだけでも、Σや微積分、オイラーの公式など、数学で学ぶ単元のオンパレードです。工学的な検討に数学が必須、ということが雰囲気だけでもまずは伝わってきますね。

PASMOのイラストから広がる、学びのチャンス!

息子がPASMOのイラストを見て投げかけた「なんで?」という一言。そこから、電車のパンタグラフの役割、そして電車の電気の仕組みにまで話が広がりました。

子どもって、本当に「なぜ?」の宝庫ですよね。普段、大人にとっては当たり前すぎて見過ごしてしまうようなことにも、彼らは純粋な好奇心で疑問を抱きます。

  • 日常の観察力: PASMOの小さなイラストから違いを見つけ出す観察力。
  • 素直な疑問: 分からないことをすぐに質問する素直さ。
  • 新しい知識への意欲: 私の「パンタグラフだよ」という言葉から、さらにその先を知ろうとする探求心。

これら全てが、子どもの知的好奇心を育む大切な要素だと、改めて感じました。私も、すぐに完璧な答えを出せなくても、「これ何だろうね?」「どうしてだと思う?」と一緒に考えてみる姿勢を大切にしたいと思っています。

まとめ:電車の「電」車たるゆえんは、パンタグラフにあり!

今回の息子との会話から、電車のパンタグラフが単なる屋根の上の飾りではなく、

  • 電車が走るための電気を受け取る
  • 架線から安定して電流を取り込む
  • 高速走行中でも電気供給を維持する

といった、電車の安全運行を支える非常に重要な役割を担っていることが分かりました。

次回、電車に乗る機会があったら、スマホに向ける時間を1分、パンタグラフをじーっと眺めてみる時間に当ててみると、何か面白い発見があるかもしれません。